Phase 5 継続的なモニタリング・評価

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子どもたちがワクワクする逢瀬町へ向かって

 

郡山市逢瀬町地区で進めているのは、「外国人目線を活用した『地域課題に向き合うふるさとづくり』事業」である。

 

キャンプ、イベント、修学旅行、企業研修等のポテンシャルがある逢瀬町には、観光スポットや歴史的な場所等様々な魅力的なポイントがある。この潜在的価値を持続可能な方法でフルに活性化することが重要な取り組みだ。

 

高齢化や過疎化という、日本各地のコミュニティが向き合う課題は逢瀬町も直面している。重要な課題の一つは、最寄り駅がある郡山市中心部との間に路線バスが途中までしか運行していないことだ。

 

活動の順調な進捗に大いに貢献するのは数年前に東京から逢瀬町に移住した地域コーディネーターだ。

 

「逢瀬町が外国人にとっての居場所になる」が事業目的の一つ。我々は特に在日ベトナム人に焦点を当てている。郡山市では近年その数が十数名から数百名に増えている。福島県で働くベトナム人にとって、逢瀬町は果たして第二のふるさとになり得るだろうか。

 

事業には在県ベトナム人3名が調査員として参加している。新しい「出逢い」の形を模索する逢瀬町地区の住民にとって、BBQパーティー、結婚式、技能実習生向けのイベント等という発想のきっかけとなる刺激的な存在だ。私のチームにはインド人が1名いる。私自身はイギリス人。一緒に、多様な国際的な視点から「出逢い」に相応しい「逢」瀬町の可能性を、効果的・効率的に検討できる。

 

これまでに「国際料理会」とクリスマスマーケットといった、重要なイベントが2回開催された。

 

料理会はベトナム風和食と和風ベトナム料理を試す機会だった。一緒に新しいチャレンジに取り組む交流が年齢層問わず魅力的だった。

 

地元の人々を集めたふくしま逢瀬ワイナリーで開いたクリスマスマーケットの成功に重要な役割を果たしたのは、地元の商品を説明し販売した子どもたちだった。

 

「子どもたちがワクワクする逢瀬町」という最終的な目的に向かって前進する上で、これらのイベントは重要な役割を果たすかもしれない。

 

地元の文化に触れることがビジターにとって大事なポイントの一つ。また、子どもにとって、地域の文化の特徴を知って育つ事が大切だ。そこで地元の学校の代表者と共に、「ふるさと自慢」をテーマにプレゼン大会を開催する可能性を模索している。

 

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「44の価値」でA Xを追求する

 

一連の事業を通じて、福島県に住むベトナム人に注目した活動を推進してきました。日本全国の地方において、慢性的な人手不足が続いている中、東南アジアの若者に、「日本企業は働きやすい」「日本は住みやすい」と思ってもらい、心地よく日本の現地の生活に溶け込んでもらうことが必須だからです。

 

初年度に、福島に住む3人のベトナム人に、調査員としてプロジェクトに参画してもらい、まずは、都心から離れた逢瀬町のコミュニティーで、日本人の日常生活のさまざまな側面を体験してもらってきました。

 

今年度は、より主体的な関わりを持ってもらえる将来像を念頭に、同じ3人のベトナム人に、逢瀬町のコミュニティと交流を持ってもらいました。

 

具体的には、地元で落ち葉の片付けを手伝ったり、地元の人たちと一緒に食事を作って皆で楽しんだりしてもらいました。この食事会をきっかけに、ベトナム人の一人は12月に開催された2回目のクリスマスマーケットで、逢瀬町の人々と協力して、干し柿の販売にも挑戦しました。

 

また、9月には、3日間の「MBAサマースクール」に、同志社大学から参加したベトナム人留学生2名に対しても逢瀬町を案内してもらいました。サマースクールの目的は、来日したベトナム人が将来、日本企業に就職する際に、日本社会の伝統的な生活様式や期待される日本文化をよりよく理解することにありました。

 

このような活動を通じて、日本の伝統文化を活性化し、言語化する上で重要なリソースとなったのが、東京都市大学の古川柳蔵教授が提唱する「44の失われつつある暮らしの価値」です。

 

「逢瀬町版44の価値」を、逢瀬町の伝統的な暮らしを知っている人々が参加するワークショップで事前に作成しました。そして、サマースクール期間中、ベトナム人メンバーの協力を得て、その内容をさらに深掘りして、参加者たちに伝統文化を伝えることができました。

 

11月には、東京のインターナショナルスクール(小学校)が逢瀬町へ農作業体験に訪れ、「逢瀬町版44の価値」が地域のアイデンティティを理解する上で重要な役割を果たしました。この訪問は大成功で、同校は今後4回、逢瀬町を訪問する予定です。

 

今後も「44の価値」は、地域とのコミュニケーションだけでなく、企業との関わりにおいても重要な役割を担っていくことでしょう。「44の価値」を活用した企業ワークショップは、企業自身の日本文化に対する意識を高め、将来的に外国人社員との関わりを深めるための土台となることが期待されます。

 

そのためには、DXと同様に、”アナログ”技術で世の中をより良いものにするAX(アナログトランスフォーメーション)を重要視する必要があると考えています。44の価値は、AXを開く鍵であり、地方で活動するすべての人にとって価値のある宝となるでしょう。